インタビュー

株式会社日本農業|イケてる会社のイケてるオフィスインタビュー

今回は日本農業さんにやってきました!
最近、資金調達をされて、いま最も目が離せない農業ベンチャー企業さんです。

オフィスはベンチャー企業がたくさん集う町、五反田。
社長室の片桐さんに色々なお話を伺いました。編集部の佐々木がお届けします。


代表取締役 内藤祥平様(五反田のオフィスにて)

 

何をされている会社ですか?

弊社は2016年11月に創業した、農業ベンチャー企業です。

「日本の農業で世界を驚かす」というミッションのもと、30名ほどのメンバーで奮闘しています。

事業内容ですが、現在の主事業として日本産農産物の輸出を行っています。

日本のおいしい農産物を、ダイレクトに海外市場へ届けることにより、新たなマーケットを開拓しています。

急速な人口減少に伴い、縮小する国内市場をターゲットとすることは、市場規模を大きくするどころか、ゼロサムゲームの戦いになってしまいます。

そこで私たちは、日本のおいしい農産物を海外の市場に向けて輸出し、これまでリーチできなかった市場にアタックすることで、国内の市場規模を拡大したいと考えています。

 

日本の農業が抱える課題は何ですか?

日本の農業が抱える課題は大きく二つあります。

一つ目は、“農産物が国内で生産されて国内で消費されている”ことです。

日本の農業は戦後70年間、ながらくこのモデルでした。

しかし、国内市場をとりまく状況は「人口減少」、「自由貿易」、「国際競争」という波を受けて、まさに今、これからの産業が永続的に成り立つかの瀬戸際に立っています。

国内需要の減少、市場規模の縮小が大きな問題となっており、これらの解決を目指して、事業を営んでおります。

そこで我々は、海外の市場をターゲットとして日本の農産物を輸出し、国内の市場を拡大していきたいと考えました。そして、最初に選んだ商材は「りんご」でした。

先ずは、青森県産のりんごを新しい市場に輸出することを目標にして、生産効率を高めるために、青森県の農産業の構造から変えていこうと考えました。

川上から川下、生産から販売まで一気通貫する、輸出だけに特化したバリューチェーンを構築しました。

生産部分でいうと、より効率的にりんごを栽培し、生産量を高めるために、「高密植栽培」というこれまでとは異なる栽培方法を取り入れました。

この栽培方法を、自社農園でPDCAを回しながらノウハウを蓄積していき、苗木、資材、資金の工面、栽培ノウハウの提供、これらをトータルパッケージとして農家に提供できるようにしました。

さらに、選果と梱包の部分では、輸出に特化した拠点の運営もしています。

りんごのサイズ別の分類や箱分けのプロセスも自社でやっており、パレットのサイズ、りんごの詰め方、箱のサイズなど、オペレーションのすべてを輸出に最適化して運営をしています。

従来のりんごの栽培方法

 


高密植栽培

 

販売の部分では、タイ、インドネシア、香港、台湾などのアジア各国に駐在員を置いて、現場の小売店に「日本産のフルーツっておいしいですよ」と直に営業をしています。

「ESSENCE」という自社ブランドのもとで販売をし、ブランディングも推進しながら、小売店で展開をしております。現場の駐在員が、売り上げをいかに伸ばせるか、日々PDCAを回しています。

また、この「ESSENCE」ブランドは、アジアの各国で商標権を取得しています。

このように、バリューチェーンを一気通貫した結果、東南アジアのりんごの輸出において、一定のシェアや存在感を示し始めています。

具体的には、インドネシアで9割のシェアが我々のりんごです。タイで5割、フィリピンで3割のシェアです。

ここで言えることは、純増という形で輸出量を伸ばしているだけであって、日本産りんごの輸出量の既存のシェアを取っているのではなく、GDPの底上げに貢献しているということです。


タイでESSENCEリンゴの試食を提供する日本農業社員

 

2つ目の課題は、国内品種の“知財の流出”です。

海外の農家が、日本で開発した美味しい品種を勝手に栽培してしまっている、という現状があります。

日本の農産物は、とにかく“おいしい“だけでなく、世界的に見ても品種として高い“競争力“を持っています。おいしいという理由で世界中の消費者に喜ばれるだけでなく、生産者にとってもつくりやすいものが多いです。例えば、「ふじりんご」は、世界中の人々から愛されていて、世界で最も栽培されているりんごの品種の一つです。

 

一方で、日本の品種の知的財産の保護が追い付いていません。その結果として、日本で開発された品種のほぼ100%は海外へ流出してしまっています。

当然、その品種を開発した農家や研究機関には1円たりともお金が入ってこない、というのが現状です。

そこで我々は知財ライセンス事業として、国内の品種知財保護策立案をしています。知財権者にロイヤルティーが入る仕組みを提供して、日本の農産物の知財を保護し、日本の農家に収益を還元していきたいと考えています。

品種登録をするにも、お金も手続きも大変ですし、英語も必要です。

我々がサポートすることにより、日本の品種を保護して、エンドマーケットも用意することができます。

知財を守りながら、海外に販路を拡大できるという仕組みです。

その際は、我々が今まで築いてきた、「ESSENCE」ブランドや販路を用いて、輸出から知財まで、一つのパッケージとして農家に提供しています。

 

アジア各国で「ESSENCE」ブランドのりんごは販売されている

 

オフィスについて、こだわった点やコンセプトをおしえてください。

現在、スタッフは30名ほどいるのですが、メンバーのほとんどが海外や青森を行ったり来たりしている状況です。

いつもオフィスにいるのが、バックオフィスのチームです。彼らには一人ずつデスクはあるのですが、それ以外のメンバーは基本的にオープンスペースのデスクで作業しています。

まだまだ駆け出しのベンチャー企業ですので、オフィスにはそこまでお金はかけることができない状況です。


オフィスは間仕切りがなく、オープンな空間となっている

 


大きなデスク。海外や青森に駐在しているメンバーの作業場所となっている

 


仕事中のリラックススペース

 


パーテーションに仕切られた、ミーティングスペース

 


オフィスに設置してある、集中バンダナ

 

将来の展望をおしえてください。

日本の農業って世界的にみてもクオリティが高いというのが、我々の仮説です。
りんごでもイチゴでもそうですけど、海外のものと比べるとすごく美味しいんです。

それは品種の開発に込められた想いや、生産過程の中でとてもこだわって作っているからだと思います。

 

例えばですが、メロンって適当に植えても一応は実ったりします。

でも、日本で栽培されるメロンは、一つの木に一つのメロンしかつけないんです。

そうすると栄養素が一つのメロンに集中するので、甘くてとても美味しいメロンができる。

そういう生産方法も、品種と合わせて海外の農家に伝えていって、日本クオリティのものを世界にどんどん広げていきたい、という想いも我々は持っています。

 

そのような想いがある中で、先ずはりんごで“日本一”を目指したいと考えています。

今まで通り効率の良い栽培方法を開発していき、それを拡大してリンゴの生産量を上げつつ、東南アジアの消費者の需要も、もっと創出していきたいです。

そして「ESSENCE」ブランドの価値も上げていくというのが、次のステップだと考えています。

ただ我々は日本農業という会社ですので、りんごで培ったノウハウや実績をもとに、他の品目でも展開したいと考えています。また、マーケットに関しても、東南アジア以外の他の国でも展開したいと考えております。

 社名に込められた、「日本を代表する農業の会社になりたい」というのが、一つの大きな想いで、我々は事業を育てていく中で、それを達成したいと思っています。

その結果として、青森県はもとより、日本全体のGDPの底上げができれば良いと思っております。

 

 

インタビューを終えて

”農業という産業全体を守り育てながら、世界へ攻めていく”。 

日本農業さんは、農業という産業の分岐点の荒波に、真っ向から立ち向かっていく、とても力強いベンチャー企業でした。

これからの時代、当たり前のことやモノも、社会環境の変化により、それが当たり前でなくなってしまう、ということが増えてくるかもしれません。

守るべきものは守り、攻めるべきところは攻める。ビジネスに限りませんが、とても大切なことを日本農業さんから教えてもらった気がします。

また、ベンチャー企業のオフィスと聞けば、お洒落なイメージを抱いている方も多いのではないでしょうか。

場所はどこであれ、そこでどのような事業を育てていて、社会に対して何を提供できるか。それがとても大切なように思います。

コストをかけて内装をお洒落にすることが全てではなく、日々みんなで社会の課題に立ち向かい奮闘してる場所、そこが「イケてるオフィス」です。

 

 

 

社名 株式会社日本農業
住所 東京都品川区西五反田1丁目13-7 マルキビル101
URL https://nihon-agri.com/